Lass uns an die Tür klopfen?

とある教会音楽家の徒然日記

Lass uns an die Tür klopfen!

その扉をたたいてみよう!
ドイツ・ザクセン州の街ヴルツェンに住む教会音楽家の日々を綴っています
扉をたたく?
教会音楽ってなぁに?

天は二物を与えるが

ブダペスト滞在3日目。
この日は午前中にリハ。昨日やった英雄は、オケが先生のやり方に慣れてきたのか流石の反応で、どんどんいい音に。
この日初合わせの皇帝(ピアノは再び金子さん)は、先生なら有り得るとは思っていたけど、本当にまさかの一回通して終了(笑)

これにはコンマスも一瞬固まっていた…。

練習場のピアノはキーの戻りがガタガタでいろいろ大変そうだったけど、音楽の方向性はしっかりしてる方だし、オケもきっと久しぶりに皇帝弾いてるだろうし、みんな音楽やりたいはずだし、もう少しやっても良かったのでは…?と思ったけれどまあいいや(笑)

時間ができたので再び観光!
当初はブダペストのもう一つの丘、王宮まで登って博物館巡りとマーチャーシュ教会見学、と思っていたのですが、何しろ初日のソリストアンコールでリストの愛の夢を聞いてしまったので、今回は見送る予定だったリスト博物館にやっぱり行きたくなりました(笑)

そして土曜午後は入れないマーチャーシュ教会では、夜6時にオルガン奏楽の礼拝がある!
というわけで午後はリスト博物館からのマーチャーシュ教会詣に決定。

リスト博物館では入口で彼がお出迎え。

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この肖像画が1番好きなんです。
博物館は、ワイマールのリストの家と似た雰囲気があり、彼の趣味が垣間見えます。
そして彼の吹っ飛び振りを象徴するこの楽器。

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下の鍵盤がハルモニウム、上がアップライトピアノという一台で2度美味しい楽器。
ここまでくると鍵盤のタッチも何もないんだろうな(笑)
貴重な楽器とはわかっているけど、一度弾いてみたい…。

そして心踊った展示がこれ。

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一昨年の聖金曜日に弾いた、十字架の道行きのスコア!

歌い手の語りとオルガンの無調的な響き、合唱によって紡がれるキリストの受難の物語、規模としてはとてもコンパクトですがずっしりと心に響く作品です。

そしてリストの本棚で見つけたこちら。

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この並びにニヤニヤするのはたぶん私だけではないかと。
理由わかる方、いるかなぁ?
お洒落なおうちにひしめく貴重な楽器たち、そして本棚にはあらゆる分野の本が並ぶ。

魔術師と呼ばれるまでの技術と音楽性、端整な顔立ち、華やかな女性遍歴、作曲家としての才能。文化人、教育者、宗教者としての顔…。

人が人生のうちで一つでもいいから持ってみたいものをたくさん持った、まさに天から二物以上を与えられた人。
でもなぜか私は、リストは幸せな人、というイメージが持てないのです。

その才能ゆえ、恐ろしく孤独だったのではないか。

誰にも理解できない領域にいるがために理解されない孤独と闘い続けたのではないかと、彼の作品を聞くとふと思うのです。
宗教者になったのも根本からの救いが欲しかったからのような気がするし、それでいて宗教的理由でしたい結婚も叶わないなんて、もうかける言葉が見つからない…。
ワーグナーと一緒になった娘の頼みだからと病を押して行ったバイロイトで亡くなった後も、音楽祭期間で忙しいからと娘にほったらかしにされ、挙句まさかのバイロイトに埋葬。
同じプロテスタント地域でも、せめて住み慣れたワイマールに眠りたかったのではないかな…。

偉大な先人の永遠に聞けない思いを様々に想像する楽しみ。
作品を通してならより豊かに想像できることは間違いない。
やるか、リスト!