Lass uns an die Tür klopfen?

とある教会音楽家の徒然日記

Lass uns an die Tür klopfen!

その扉をたたいてみよう!
ドイツ・ザクセン州の街ヴルツェンに住む教会音楽家の日々を綴っています
扉をたたく?
教会音楽ってなぁに?

ICAK 2015 その2 

10日間の合唱アカデミー、10日間も何をするの?

とにかく歌うんです。朝8時から夜9時まで(笑)
途中休憩がもちろんありますが、発声練習、全体練習、合唱指揮、合唱で歌うための聴音、4つのグループに分かれた合唱の練習と、プログラムが豊富です。

170人の参加者すべてが集う全体練習では、9日目の夜にある演奏会と、最終日の朝のミサで歌う曲を練習します。
今回のメインはブラームスのドイツレクイエム。
何度か歌ったことはありますが、ドイツとオーストリアでは同じドイツ語でも言葉の処理が違うため、普段とは違った集中力を要求されます。

全体練習の時間の前半をパート、またはソプラノ&テノールとアルト&バスといったようにグループに分けて練習。
かなり細かくやってはいましたが、ドイツレクイエムあるある、オケ合わせになると音がどんどん下がる…。
エルヴィンが必死に持ち上げて、本番はなんとか許容範囲に…。
お風呂場のような残響、狭い、指揮者から遠いなど、いろんな要素がよくも悪くも力を発揮してくれるのが、大きな教会での演奏会の特徴です。

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本番会場はクレムスの街の中心にある教会。
典型的なバロック建築のカトリック教会の祭壇が舞台です。
豪華絢爛、キラッキラ!!なのはいいのですが、たいていどの教会も祭壇や合唱隊席は作り付けのため、それをよけながら、隙間を縫うように合唱とオーケストラを配置するため、本当に狭い!!
手すりにぶつかりながら歌ったため、後日見てみたら私の腰にはアザができておりました。
今回は山台を運んできてまだよかったのですが、場合によっては前の人と同じ高さに並ばなければならないため、小さい人は前が見えません…。
しかしここはヨーロッパ。自分の居場所は自分で確保!が基本。
いろんな合唱団で歌っていると、いろんな意味で度胸がつきます(笑)
私は祭壇のすぐ近く、壁に沿って作られた合唱隊席の一番客席側二列目に陣取りました。
指揮者を真横から見ることになるのですが、一番ここが指揮者から近いソプラノ席。そしてオケ全体が一番まとまって聞こえる席なので、エルヴィンの眼光が非常に怖くはありますが、いろんなことを吸収できることは間違いのない席です。
私の位置から見た合唱とオケの様子がこちら。

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合唱もですが、オケプレーヤーにとってはこの狭さは地獄と思われます…。
思うように動けない上に聞こえてくる音はもわんもわんの残響、または合唱の一部分…。
いろんな意味で各々の持ち場で鍛えられるのがこのアカデミーの本番の特徴です。

本番はいろんなことが起こりました。
エルヴィンの音楽は本当に自然で柔らかく、暖かなのですが、恐ろしいほどに心地よく絶妙に自然に流れていくため、本当に集中してついていかないと振り落とされます。
いつもの練習通りなんて、あり得ない。気持ちいいなんて、酔いしれたらアウト。
その時にしかできないものを最高のタイミングで紡いでゆく。
この危ういほどのナマモノ感こそが音楽の本質なのかもしれない。
ソロでもないのにここまで肝を冷やすなんて初めてのことで、翌日まで疲れを引きずりはしましたが、本当に大事なものを掴んだ本番だったことは間違いなし。
あとは、この経験をどう活かすか…。これからの課題です。